色彩は「もう一つの心の言葉」です。 色は私たちの感情や記憶と深くむすびつきながら日々を豊かに彩り、心身に様々な作用を及ぼしています。色を使った表現を通して心を元気にしたり自分らしさを育てたりするアートセラピーを社会に活かしていきたいと思っています。

眠気も覚める“赤”!

この時期、子どもたちも疲れがでるのかアトリエでも眠たそうにする子がでてきます。

あたらしい学期になり先生やクラスも変わり、なにかと頑張らなければならないことも多いのでしょう。
また今年のように寒暖の差の激しい春を過ごした後は、子どもたちだって暑さへむけて体の準備をするのは大変です。

ある6才の男の子もアトリエに来たもののなんだか眠たそうでした。

そして「今日はリンゴを描きます。リンゴの写真はありますか?」と聞いてきたので
彼にしたら珍しいリクエストだなあ、と思いながらあっをちこっち探してみました。
でもなかなかいいのがなくて、結局チラシにあったトマトの写真を見つけて
「これを使おう」ということに。

写し絵にするというのでトマトの写真の上にトレーシングペーパーを置いて鉛筆でなぞります。
それから水性クレヨンの赤を手に塗り始めました。

でも眠い・・・。
目がとろ~んとなって頭もゆ~らゆ~ら、時折り額が前にカクンとうごきます。
「ちょっとお休みしながら描いてもいいよ」と言っても
「いや、塗ります!」と健気です。(この男の子は、ですます調で話してくれます)

「今日、幼稚園でなにかあったの?」と聞くと
「逃走中!をしてきましたよ」

?????・・・・・。

「逃走中!」ああ、あれか。某テレビ局の人気番組でときどきやっているあれ。
いかにも身体能力の高そうな黒い背広に黒いサングラス姿の「ハンター」たちが、テーマパークやモールなどの限られたエリアで、隠れたり逃げたりするタレントたちを追いかけて捕まえるというものです。
私も見たことがありますが、賞金がかかっていたりいろんなミッションがあったり捕まった人の情報が携帯で相互にわかったり、けっこう心理戦もあって目が離せませんでした。

あれを幼稚園で遊びでするんですね。おにごっごとかくれんぼが一緒になったような・・・。しかもスリリング。
へぇ~っと思うような、私の知らない今の子どもたちの情報もこうしてときどき入ってくるのはほんとにおもしろい。


だから・・・・。
でなくてはならなかったのですね。ほんとに子どもは正直、心のまま色を選んでくれます。
を塗っているうちに眠たかったこの男の子もだんだん元気に、そしてシャキッとしてきました。

赤い色は交感神経を刺激して血圧を上昇させ、やる気や活力などエネルギーをさそいだす波長を持っています。
それが私たちの心身にはたらきかけるので、ちょっと元気になりたいときには力になってくれる色です。


「逃走中!」のいろんな話もおもしろかったけど、いつも穏やかでどちらかというと緑や青が好きな子が今日に限って欲した赤の意味。 「逃走中!」の興奮が残る中、眠い体が自然に求めた赤だったのです。