色彩は「もう一つの心の言葉」です。 色は私たちの感情や記憶と深くむすびつきながら日々を豊かに彩り、心身に様々な作用を及ぼしています。色を使った表現を通して心を元気にしたり自分らしさを育てたりするアートセラピーを社会に活かしていきたいと思っています。

先生、オレ成長したわ!

夏休みです。
この猛暑どこまで続くのかと思っていたら、今日は部屋の中も30度を切り、涼しいと感じる風も入ってきます。

例年アトリエでは夏休みの自由工作や宿題のお手伝いをしていますが、今年は、なんとしてもアトリエで宿題(ポスターなど)を仕上げたいという子は少なく、
宿題は家でアトリエは自由に、という普段通り過ごす子どもたちが多く落ちついています。

やっぱり自由空間のアトリエですから、やらねばならない宿題があると、作品制作以上にみんなの「心の段取り」がたいへんです。
なかなか進まない作業に励ましたりなだめたり。
ついつい口出しが多くなり、やたら指示している自分は矛盾のかたまりです。
本人の意思と関係なく先に課題があるというのは、表現にとってはほんとうに負担なものです。

そういう意味では、持ち込まれる宿題の少ない今年の夏は私の気持もちょっと楽。

そんな中、ある4年生が新聞とガムテープで東京スカイツリーをつくりました。
これは夏休みの自由工作ということで学校に提出します。




一緒にプロセスを考え、3回めのアトリエでようやく完成。
その彼が「センセ、オレ今回すごく成長したわ―」となんだかすごく晴ればれとした感じでいうのです。
その言い方もおもしろくて、「私もそれすっごく思うよ!」としっかり返しました。

彼がいう成長とは「待っていられるようになった」ということ。
なんでもすぐにセロテープで止めたかったけど、ボンドやのりが乾くのを待っていられる
必ずその日のうちに作って持って帰りたかったけど、何度かに分けてすすめていっても大丈夫、完成を待っていられる
それをこのスカイツリー作りですごく感じたのだそうです。
そして「いやあー、オレ成長したわ」と何度も何度もいうのです。

「ねえ、センセもそう思わない?」
「思うよ思うよ、すごくそう思う」


確かに最近は時間をかけて作品作りをするようになった彼も、少し前まではなんでもかんでもセロテープで、糊やボンドは嫌いでした。
乾くのをまっているのがいやなのだそうです。
色を塗るのも、マーカーやクレヨンはいいけど、絵具はめんどくさい。


そんな彼が今回スカイツリーを作るのに、まず新聞とガムテープで形にすることから始まって、グレーの絵具で下塗り、
その上にビニールテープなどで模様を描くというけっこう複雑なプロセスがありました。
関口光太郎さんの「新聞紙とガムテープでこんなのつくれた」という本を傍らに、苦労しながら作っていました。


彼の言う「待っていられる」てすてきなこと。

自分の中に何かをとどめておける、ためておける、て大事なこと。
その時すぐにできなくてもあとから考えなおしたり、新たな発見があったり、自分と対話してたりできる。
お友達のことだって待っていられるようになる。


彼はいいます。「オレ我慢できるようになった」とも。

なにより君が、そのことに自分で気づいて自分で言える、ということが気持いい!

表現することで本当に人は成長できるんだということを感じさせてくれました。
どんどん変わる子どもたちは、みんなスカイツリーみたいに高く高く伸びていけそうです。