色彩は「もう一つの心の言葉」です。 色は私たちの感情や記憶と深くむすびつきながら日々を豊かに彩り、心身に様々な作用を及ぼしています。色を使った表現を通して心を元気にしたり自分らしさを育てたりするアートセラピーを社会に活かしていきたいと思っています。

アトリエ10周年を迎えました

この4月でアトリエは10周年をむかえました
保護者の皆さんやこれまで協力してくださった方々に、感謝の気持ちとお知らせのプリントを作ってお配りしました。
ちょっと長い文章なのですが、そのままここに掲載します。
 
      

今年、アトリエコスモスは10周年を迎えます。
最初は看板も出さず、たった一人の女の子とスタートしました。
それからたくさんの出会いがあり、今では大人の方もふくめ、20名以上の皆さんに参加していただけるようになりました。

これまでアトリエを続けることができたのも、元気に通ってくれた子どもたちと、アトリエの活動を理解してくださり、子どもたちの成長をともに見守ってくださった保護者の皆様のおかげです。本当に心より感謝申し上げます。

この10年、子どもたちが自由に表現することを通して、自らの力をどんどん伸ばし成長していく姿に接っすることができました。それは、同時に私自身の遠い子ども時代を追体験しているようであり、また自らの子育てを否応なく振り返る時間でもありました。私自身もアトリエを通して多くのことを受け取り成長してきたように思います。

その一方で、最近は、子どもたちの中にもさまざまな変化が生じているように感じています。
どの子も個性的で、その子なりのペースで制作を楽しんでいることには何の変わりもありません。

けれども作品の中に、以前のような情熱や探究の跡が見えにくくなり、どちらかというとシンプルであまり手をかけない感じのものが多くなっているように思います。

たとえば、人物を描いても一人だけをポンと描き、人間関係や情景を感じさせる他のモチーフやバックが描き込まれなかったり、工作も時間をかけてイメージに近づける前に、飽きてしまったりすることが増えているのです。

これはなぜなのでしょう?
最初は、私が歳をとってしまったからかしら?と思いました。
けれどもそうではなく、他のアトリエ主催者や美術教育に携わる人からも同様の感想が聞かれるのです。

このことは、子ども達をとりまく環境の変化とけっして無縁ではないように思います。情報化が加速し便利になる一方で、子どもたちは五感を使って自ら体験したりじっくり考えたりする機会が減っているように思います。なにを見ても既視感があり心が動きにくくなっているのではないでしょうか。

思えば2000年代に入って間もなくは、インターネットもまだダイヤルアップ回線で時間を気にしながら使っていました。
今ではネットは定額で24時間つなぎっぱなしです。いつでも何でも見ることができ、すぐに欲しい情報が得られるようになりました。一家に一台だったパソコンも、今では子どもから大人まで個人が複数の多機能端末を使う時代になりました。

ネット社会は子どもたちの生活にも入り込み、ラインなどの携帯アプリがトラブルやいじめの原因になっていることを耳にするたび胸が痛みます。もはや私たち大人の経験は、ネットやスマホといった子どもたちの情報量に追いつかず役に立たなくなっているのかもしれません。
今の子どもたちは、学校などの人間関係から離れて自由に自分を感じたり、何か好きなことを通して自分を大事にしたりする時間が本当に少なくなっているのではないかと思います。

そんな時代だからこそ、私は、自由に創作することや、色彩を使って表現することがますます大切になっていくのではないかと感じています。評価を気にせず、自分で選び、自分で考え、創造することは、小さな場所と身近な画材さえあればすぐにできる楽しい活動です。
絵を描いたり工作したりすることを通して、表現力はもちろん、数字では計れないひとりひとりの『自分』を伸ばし、内面の強さややさしさ、自己肯定感を育んでいってほしいと願っています。

10周年を機に、アトリエはまた新たに出発したいと思います。
時代や子どもたちの変化を受けとめつつ、新しい画材を取り入れたり、高学年の子どもたちには他のアーチストの作品鑑賞をする時間を設けるなど、さまざまな工夫をしていきます。

小さなスペースですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。