色彩は「もう一つの心の言葉」です。 色は私たちの感情や記憶と深くむすびつきながら日々を豊かに彩り、心身に様々な作用を及ぼしています。色を使った表現を通して心を元気にしたり自分らしさを育てたりするアートセラピーを社会に活かしていきたいと思っています。

絵は語る・・・「自由だから道はいらない」

3年生の男の子の絵です。

「今日は何をしようかなあ」というので「水性クレヨン試してみる?」と声をかけたら、「やるやる」と言って、ゆっくりとしたペースで描きました。

なんだか不思議な感じのする絵です。



最初は川から描きはじめ、草原のような地面と山、しっかり太い道、それから木を描きました。
最後に「う~ん、どっしよっかな?」と言いながら橋を描いて完成。

「あれ、橋の向こうに道はないの?」と聞くと「そう、橋の向こうは“自由”だから、道はいらない」との答え。

なるほど“自由”か。だから道はいらないのか。

子どもたちがなにげなく描いた絵には多くのことが語られていることがよくあります。
例えばこの絵のように、川や海など水に関するモチーフは、感情が動いているときや揺れているときよく出てきますし、はその子自身、自分のエネルギーともとれます。(実際、人の形のようにも見えます)

この男の子のように、3年生から4年生といえば思春期にはいるちょっと手前。
身体の変化を感じたり、友達関係もはっきりしたグループができたり、親や先生の言うことが煩わしく感じたりする、そんな時期です。
これまでは親や周りの言うことに従ってきたけれど、従順なだけでなく自分は自分で勝手にやりたいと言う“自我”も芽生えてくるのもこの頃。
いわゆる「ギャングエイジ」と言われる学年です。

この絵を描いた彼の心にもそんな複雑な感情があるのかもしれません。

川に分けられた手前と向こう。
手前にはこれまで周りの言うことを受け入れ太い道を歩いてきた、いわゆる「いい子」の自分があり、川を渡った向こうでは“自由”にやりたいもうひとりの自分がいる、そんなふたつの気持が描かれているように思います。

山は、なにかやりたいことの表現かな?
淡い色合いからは、自由の半面不安や冒険やいろんなことがありそうな複雑さも感じます。

画面は川によってふたつに分断されているけどしっかり橋がかかっていて繋がっています。
力強さも繊細さも感じさせる表現。孤独感も見えます。

いろんな葛藤を乗りこえながら自分のやりたいことをどんどんやって成長していってほしいな、と思います。